ラストレター
裕里の姉の未咲が、亡くなった。裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎と再会することに。勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。その内のひとつの手紙が鮎美に届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎と未咲、そして裕里の学生時代の淡い初恋の思い出を辿りだす。ひょんなことから彼らを繋いだ手紙は、未咲の死の真相、そして過去と現在、心に蓋をしてきたそれぞれの初恋の想いを、時を超えて動かしていく———
始まりは、スマホ水没
小さな滝で制服姿で水をかけあって戯れる姉弟。その中で、哀愁漂う表情を見せる鮎美(広瀬すず)
3人が制服を着ていたのは、鮎美の母、未咲葬儀だったからだ。なぜか、水をかけあってびちゃびちゃのままお経を聞く姉弟。どこかおかしい。テンションがおかしい。
葬儀に参列する親族も、悲しみの感情を出すことはない。いったいどういう事情なのか。冒頭から『?』だった。
ストーリーの始まりがよくわからず、フワフワしたまま見続ける。
葬儀を終えて自宅へ帰った裕里(松たか子)。自宅で待っていた夫が『庵野秀明』だった。なんか笑った。
この人、たまに俳優してるんだよな。(エヴァとか、シンゴジラの監督さん)
未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。
同窓会で初恋の相手、鏡史郎(福山雅治)に再会する裕里。未咲のフリをしたままメッセージのやり取りがはじまった。
そのメッセージを庵野が見てしまってブチ切れた。スマホを風呂にぶん投げて破壊した。バ、バイオレンス!!(暴力)
裕里『夫にスマホ壊されたのでメッセージできません。お手紙ですみません』と、文通が始まった。これで物語が動いた。この映画の柱である文通。庵野のバイオレンスが物語を大きく動かした。
鏡史郎の答え合わせの旅
未咲は自殺だった。前夫のDVやらで精神を壊し自殺未遂を繰り返したのち、自殺した。
鏡史郎が未咲の死を知ってからは、積もった思いや後悔の空白を埋める答え合わせが始まる。
元夫に会ったり、学校に行ったり、偶然鮎美に遭遇して未咲に線香をあげたり。
鏡史郎が出版した『未咲』は、未咲に届いていた。
想いは届いていた。嬉しい。でも自殺してしまった。遅かった。
広瀬すずの迫真の演技。
鮎美
『母をモデルに小説を書いたこの人が、いつか母を迎えに来てくれる気がして。そう思ったら、なんか、すごく頑張れました。もっと早く来てほしかったですけど。』
もっと早く来てほしかったですけど。
なんか、重い。
グサッと刺さった。
責めてるわけでも悔いてるわけでもない。諦めて納得しているうえでの、このセリフ。
いろんな感情が含んでる。
未咲と鏡史郎の距離感に、ホロリとした。
気持ち悪いと評される理由
前提の説明はあまりせず、ストーリーが進むにつれて『え、そうだったの!?』が次々と明かされていくストーリー構成。スピード感があって、見ていて飽きなかった。
しかし、モヤモヤポイントも。
- 未咲が鏡史郎から阿藤に乗り換えた理由
- 文通のアンジャッシュのコント状態が筆跡でバレない奇跡
- 娘への最後の手紙が鏡史郎と共作した卒業式の答辞だった
この辺がちょっとだけモヤモヤである。
特に、娘への最後の手紙が鏡史郎と共作した卒業式の答辞だったところ。未咲が誰を想って生きて、死んでいったかの答えで、この映画の大オチだ。切なくて悲しくて、暖かいんだけど、もうちょっとどうにかならなかったか?と、思ってしまい、もどかしかった。
未咲は、DV夫を選んでしまって鏡史郎をフッてしまった。しかし、自分を題材に愛のあふれる小説を世に送り出してラブコールを送っているのには気づいている。わりとずー---っと、鏡史郎の事を想い続け生涯を閉じている。それが、どのくらいの気持ちの大きさかと言うと、娘への『ラストレター』に鏡史郎との共作答辞を送るほどなのだ。
一方、鏡史郎は『未咲』以降、小説がモノにならずに悩んでいる。ずー----っと未咲を愛している。ずー---っとだ。ストーリー中の言動を見る限り、恋愛も仕事も未咲一色で、両方ともうまく行っていない。
お前ら、もうちょっとどうにかなんなかったのか?
(´;ω;`)
……と、どうしてもツッコミを入れてしまいたくなる気持ちになってしまう。
この、想いの強さと、現実に起こってしまった事実のギャップは、かわいそうを通り越して、若干の気持ち悪さすら感じてしまったな。